新しいクラス割が発表されて、志摩子は少しドキリとした。

 二年藤組。

 卒業されたお姉さまも、学年は違えど藤組であったが、それ以上に気になるのは。
 今はもうリリアンにはいないが、ほんの少し前までは二年藤組に在籍していた人のことだ。

 蟹名静さま。


 未だに理解することは出来ない御人。単に付き合いが短いだけだからか。いや、例え長く付き合ったとしても、志摩子には静さまを理解することは困難かもしれない。


 祐巳さんに一度静さまの印象を聞いたことがあるが、彼女曰く。

 「美人で人当たりが良くて面倒見も良くて。あと、結構大胆でお茶目で・・・涼しそう。かな」

 と。それだけ聞いても静さまだとは分からないだろうコメントを貰ったのだった。



 静さまがいつ日本を発つのかは知らされていなかった。何日か経った後にお姉さまから聞かされた。
 騒がれたくないからと言っていたらしいが、本当にそうなのだろうか。
 もしかして、お姉さまにだけ知っておいて欲しかったのではないだろうか。
 でも、その答えを持っている本人はもういない。回答を得ることは出来ないのだ。



 二年藤組の教室に着き、黒板に張られた座席表で自分の席を確認する。後ろから二番目。目が悪いわけではないから、特に問題はない。
 指定された席に着いて、筆記用具くらいは鞄から出しておこうと思って取り出したペンケースを机にしまおうとすると、何かが手に触れた。

 何気なく取り出したそれは封筒だった。葉書よりも一回り大きいその封筒の表には、丁寧な字で宛名が記されている。

 『藤堂志摩子さんへ』

 間違いなく、自分宛。不思議に思いながらも封を開けて中身を取り出す。
 真っ白な紙の真ん中に、数行の文。



 『ごきげんよう、志摩子さん。それとも進級おめでとう、の方がいいかしら。
  今年一年、この教室で頑張って。
  これを読んだらすぐに手紙を頂戴。待ってるわ』



 一番下に住所らしきものが続き、最後に「静」と結ばれていた。


 志摩子は目を細めて苦笑した。一体いつの間に入れておいたのか。いや、それよりもどうやって志摩子が藤組のこの席になることを知ったのか。

 いくら考えても、本人に聞く以外本当のところは分からない。志摩子は考えるのを止めた。

 静さまは手紙を頂戴と書いていた。とりあえず、その辺のことを聞くために手紙を出してみることにしよう。

 そう決めると、志摩子は静さまからの手紙を丁寧に鞄にしまった。





あとがき

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