山百合版 桃太郎




 昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが仲良く暮らしていました。

 いつものようにおじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。

 おじいさんが山から帰ると、おばあさんが巨大な桃を目の前に何やら考え込んでいます。

 「ただいま、蓉子。・・・・・何、その桃」

 「あ、お帰り江利子。今日川で拾ったんだけど・・・・・食べられるかしら?」

 珍しいものに目がないおじいさんは包丁を持ってくると、一気に真っ二つにしようとしました。

 「?何か突っかかってる・・・・・」

 「種じゃない?」

 おじいさんはさらに力を加えますが、真っ二つにできません。

 と、その時、桃が割れました。

 「危ないじゃないですか!もう少しで死ぬところだったんですよ!」

 中から、必死の形相で真剣白刃どりをしている子供が現れたのでした。



 おじいさんとおばあさんはその子供に正式名は桃太郎とし、普段は令と呼んで大切に育てました。

 やがて大きくなった桃太郎は風の噂に鬼が島のことを聞き、退治に行く決意をします。

 「そんなひどい鬼がいるなんて・・・・・私が退治してきます!」

 おじいさんとおばあさんは大変感激し、竹刀となぜか猿用と普通の二種類のきび団子を用意してくれました。

 「おもしろい土産話を期待しているからね、令」

 というおじいさんの言葉に勇気付けられ(?)、桃太郎は足取り軽く出発しました。

 しばらく歩くと犬が寄ってきました。

 「令さま、何か食べ物下さい・・・・お腹が空いて死にそうです・・・・・」

 「大丈夫?はい、きび団子。ところで名前は?」

 「ありがとうございます!私は祐巳です。お礼にお供させて下さい!」

 桃太郎プラス犬はどんどん道を歩きます。

 すると。

 「きゃあ!!」

 「やったー!犬が引っかかった!これで今日は犬鍋にしよう!」

 犬が猿の仕掛けた罠に引っかかってしまいました。

 そのまま犬を連れ去ろうとした猿に桃太郎は話しかけました。

 「あの、お猿さん。その犬をこのきび団子で返してくれませんか?」

 桃太郎は「猿用」と書かれたきび団子を取り出しました。

 「えっ、きび団子?わかった、はい」

 あっさり取り引きに応じた猿はきび団子を一つ食べ、走り去ったかと思うと、すぐに引き返してきました。

 「お供させて下さい!」

 さっきまでと目の色が違います。

 (まさか、あのきび団子・・・・・何か入ってたんじゃあ・・・・・)

 桃太郎は恐ろしくなってそれ以上考えるのをやめました。

 さらに進むと、今度はキジが罠にかかっていました。

 「お猿さん・・・・これもお猿さんの仕業ですか?」

 「えっ?いや、まさか・・・・。それより、私の名前は聖だよ。ほら、令、早くキジを助けなきゃ」

 「・・・・・はいはい。今、助けるからねー」

 罠を外す桃太郎耳に、「ちっ、今夜のおかずが・・・・・」というつぶやきが聞こえてきましたが、それは聞こえないふりをしました。

 「ありがとうございました。私は志摩子といいます。助けて頂いたお礼にお供させて下さい」

 お供が増え心強くなったところで、桃太郎は鬼が島に上陸しました。



 「やい、みんなを苦しめている鬼達め!私が退治してくれる!」

 そう言って竹刀を構える桃太郎の前に鬼が現れました。

 「誰よ、もう。八時から時代劇が始まるんだから用事は手短にね」

 「・・・・!!!」

 「どうしました、令さま!?」

 出てきた鬼を見るなり言葉をなくした桃太郎に犬が声をかけました。

 「かわいい・・・・・」

 桃太郎は脳みそが半分ほど溶けていました。

 「由乃ちゃん、どうしたの?」

 そこにもう一人鬼が現れました。

 「あ、祥子さま。何か、私達を退治しに来たらしいんですけど・・・・・」

 「私達を退治?何を言ってるのかしら?」

 ふふんと鼻で笑う祥子鬼をみた犬が息を呑みました。

 「う、美しい・・・・・」

  犬は祥子鬼の美しさに魂を抜かれかかっていました。

 「退治されるわけにはいかないから、相手になるわよ」

 やる気満々の祥子鬼と由乃鬼に対し、桃太郎と犬は戦意喪失、猿はきび団子の効果切れかやる気がなく、キジは戦力不足と、桃太郎達に勝ち目はありませんでした。

 桃太郎達は、これはまずいと思い逃げ出そうとしました。

 ところが。



 「で、令と祐巳ちゃんは鬼に捕まっちゃったわけ?」

 「うん。何かあちらさんがえらく二人を気に入っちゃってさあ」

 猿とキジはおじいさんとおばあさんに鬼が島でのことを説明しました。

 話を聞いたおじいさんはおかしくて仕方ないといった感じで大笑いしています。

 おばあさんは猿とキジが気に入ったので、一緒に住まないかと持ちかけました。

 猿とキジは大賛成しました。



 そして、みんなそれぞれ幸せに暮らしました。


おわり




あとがき


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