in the sky

 毎日が退屈だった。
 同じことをただ繰り返すだけの日々。
 そんな日々に終わりを告げにやってきたのは、みちる。


 みちるがはるかの前に現れてから、はるかは退屈はしなかった。多少イラついたりはしたが。
 が、それもすぐに消えた。

 ウラヌスとしての自分を受け止め、受け入れ戦ってきた。タリスマンを探し出すことが目的だが手がかりは、ない。ともすれば以前のような変わり映えのない毎日になりかけたが、みちるの存在がそれを防いだ。

 大抵みちるの方からはるかに会いにやってきた。学校帰りや競技場やサーキット。現れるのが自然で、いつしかはるかは街中でみちるの姿を探すようになった。

 ある日はるかは部屋でぼんやりしていた。みちるは四日程前から姿を見せていない。今までは二日に一度ははるかの前に現れていたので、はるかは少し不思議に思った。

 みちると会わない日が続いただけではるかの心は落ち着きをなくした。はるかの心にこれほど影響を与えた人物は、みちるが始めてだった。

 はるかは自分がみちるに惹かれていることに気づき、苦笑いを浮かべた。他人に対してあれほど無関心だった自分はどこへいってしまったのだろうと考える。

 ふと、窓の外へ目をやる。
 今日は快晴。
 本当に雲一つない、青く澄み渡る空が広がっている。
 はるかは空を見つめた。

 かつて自分たちがいた星を、はるかは空の向こうに見ようとした。
 青いけれど、透明な、空。
 その気になれば遥か彼方、永遠すら見えてきそうな空をはるかはただただじっと見つめた。

 空にみちるは見えなかった。

 はるかは「ばかだな」と自分に対して呟いた。
 みちるは海の戦士だ。空に在るはずがない。
 はるかは空に、みちるは海に。二人の場所は対極に位置している。
 はるかはその距離の分だけ、余計に強くみちるを求めた。

 今はみちるに側にいて欲しかった。先の見えない戦いで疲れたこの心を、みちるに癒して欲しかった。

 せめて声だけでも、と思い電話を持った手が、止まる。
 はるかは自分がみちるの連絡先を聞いていなかったことに、今更ながら気づいた。
 今まではみちるの方から会いに来てくれたから。自分がみちるのことを考えると、決まって彼女は現れたから。だから。

 はるかは諦めて電話を置くと再び空を見つめた。
 その口から、詩がこぼれる。



 Ihr gebt den Sohlen Flugel      (両足のかかとに翼を与え、
 Und treibt durch Tal Und Hugel    谷こえ丘こえ、いとし子を
 Den Liebling weit vom Haus.      遠くへ駆り立てる神々よ、
 Ihr lieben, holden Musen,        やさしいミューズの神々よ、
 Wann run ich ihr am Busen       一体僕はいつになったら
 Auch endlich wieder aus?     彼女の胸で再び休むことが出来るのか?)



 口にし終えたとき、はるかは深い溜め息を吐いた。そして、決めた。
 今度、連絡先を聞こう。そして、自分の気持ちを伝えてみよう。

 先程置いた電話が、鳴った。


あとがき





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