SEA−SIDE


 海岸沿いに工場が立ち並ぶ海を、みちるは眺めている。
 今みちるが歩いているのは、海の真ん中あたりに立つ、灯台への道。
 青く澄んだ海ばかりが全てではない。
 風が強く、髪は躍らされっぱなしだ。
 波を眺めながら、みちるは気づいた。
 この波は、自分の髪と似た色をしている―――――
 訳もなく嬉しくなった。

 程なくして、小さな灯台へたどり着く。
 辺りに人気がないので、みちるはコンクリートの上に寝転んだ。
 腕で太陽の光を遮る。
 残暑が厳しくなろうとしていたが、吹き続ける冷たい風のおかげであまり暑さは感じない。
 空を見上げる。
 遠くに行くほど青が薄くなっていく空を見ながら、なんて遠いのだろうと思う。
 空を手に入れることは出来るのだろうか。
 海に触ろうと思ったら、海面に触れればいい。
 では、空は?
 科学を発達させ、空を飛ぶことは出来ても、結局空に触れることは叶わない。
 埋め立て、面積を狭くすることが出来る海とは正反対だ。
 みちるは一人の人を思い浮かべた。
 あの人を繋ぎ止めておくことは、できるのだろうか―――?


 しばらく波と風の音だけを感じていると、場に合わない音が聞こえた。
 通信機が、鳴っている。
 「なあに?」
 『ダイモーンだ』
 「そう」
 みちるは手短に場所を聞くと、通信を切った。
 すぐに、戦士としての自分を呼び戻す。
 体を起こすと、波の音が遠くなった。
 同時に、空にほんのわずかだが近づいた。

 不意に、カモメの鳴き声が聞こえてきた。
 一羽きりで飛んでいるカモメは、あっという間にみちるの視界から消えた。

 今は、使命という名の鎖で繋がっていられる。
 では、その鎖が切れたら?
 みちるは考えを打ち消した。
 今は、そんなことを考えている場合ではない。
 今しなければならないことは、一秒でも速く、はるかの待つ場所へ向かうことだ。
 立ち上がり、風に揺れる体のバランスを取りながら歩き出す。


 今は、今だけは――――――








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