CUTE?


 うさぎ達五人がゲームセンター「クラウン」へ向かっていると、前方に見覚えのある車が停車した。
 助手席側のドアが開き、やはり見覚えのある人物が降りてきた。
 「あれ?みちるさんだ」
 「ほんとだー」
 「てことは運転してるのはやっぱりはるかさんか」
 口々に言っている間にみちるは運転席に向かって軽く手を振り、五人の方へ歩いてくる。
 路肩に寄せていたはるかの車が、滑らかに発進した。
 運転席のはるかは、五人とすれ違うときに軽く手を上げて小さく笑った。
 「やーっぱはるかさんてクールだよね〜」
 歩くみちるの耳にそんな声が聞こえてきた。
 「あら、はるかは可愛い人よ」
 思わず、声をかける。
 みちるが言うとうさぎ達は驚きの声をあげた。
 「え!?」
 「はるかさんが・・・」
 「可愛い・・・?」
 揃って首を傾げる面々。
 そんな彼女等を見て、みちるがくすっと笑う。
 「ええ」
 「あの、それってどういう・・・?」
 美奈子が代表して尋ねると、
 「そのままの意味だけど・・・?」
 みちるは微笑を浮かべたまま逆に美奈子に尋ねた。
 「だって、はるかさんていつも冷静で喜怒哀楽だって激しくないし・・・」
 みちるの言わんとするところがさっぱり分からないという顔をして、美奈子が答える。
 「ああ、はるかはあなた達には強がって見せているのね」
 面白そうにみちるは言う。
 「そうね、例えば・・・」



 一人で車を走らせていたはるかは、賑やかな集団を見かけて速度を落とし、近づいた。
 そして横につける。
 「やあ、おだんご頭達」
 「はるかさん!」
 「相変わらず、元気がいいな」
 ハンドルにもたれて、はるかが笑う。
 「あの、はるかさん・・・」
 「ん?」
 「おいしく野菜を食べる方法、知ってますよ?」
 「え?」
 「ピーマンはおいしくないですよねぇ〜」
 まことやうさぎが言ってることの真意が掴めず、はるかは戸惑った。
 「おいおい、何の話だ?」
 苦笑いしながら訊くと、五人が顔を見合わせる。
 まるで、言ってもいいのかどうかを迷っている風にはるかには見えた。
 「あの、実はこの前みちるさんから・・・」
 「はるかさんの可愛いところを教えてもらって・・・」
 レイの言葉を亜美が引き継ぐ。
 「例えば、野菜が嫌いだ、って言ってました」
 美奈子が締めくくる。見事な連携プレーだ。
 「それ、みちるが本当に言ったのか?」
 「はい。まるで子供だ、って笑ってました」
 はるかはハンドルに突っ伏した。



 「みちる」
 その日の夜、家に戻ったはるかはグラスを傾けながらみちるに呼びかけた。
 「なあに?」
 「・・・おだんご達に何か変なこと、吹き込んだろ?」
 「いいえ?」
 「僕が、可愛いって?」
 はるかが眉を寄せたまま、横目でみちるを見る。
 「本当のことよ」
 涼しげな顔でみちるが笑う。
 「野菜嫌いって、思いっきり嘘じゃないか」
 何でまた、そんな嘘を・・・とぶちぶち言いながらはるかはグラスを口元に運んだ。
 「あの子達が、あなたのことをクールだって言ってたわ」
 「へえ」
 「だからちょっと本当のことを教えてあげたくて」
 くすくすとみちるが笑い出す。
 「でも、結局嘘を教えてるじゃないか」
 「あなたが可愛いのは、私と二人でいる時だけですもの」
 はるかの持つグラスを取り上げて、口をつける。
 「言ってまずいことでもないだろう?」
 グラスを取られて手持ち無沙汰になったはるかは、手を組みながら訊いた。
 みちるがグラスに口をつけたまま、小さく「ばか」とつぶやいた。
 「はるかを、一人占めしたかったの」
 その言葉にはるかは顔が熱くなるのを感じて、誤魔化すためにみちるの膝に寝転んだ。
 髪を撫でるみちるの手が心地良い。
 「・・・そうやって、照れるところが可愛いの」
 「照れてなんかない」
 「顔が熱いわよ」
 「アルコールだよ」
 「嘘。はるか、顔に出ないじゃない」
 「・・・・・・」
 はるかは寝たふりをしようかと思った。
 「好きよ、はるか」
 少しの沈黙の後、はるかは体を反転させてみちるの手をとり、ゆっくりとその甲に唇を押し当てた。
 ゆうに一分以上経ってから、唇を離す。
 「うん・・・」
 短く答えて、体を起こす。
 キッチンの方に姿を消したはるかが、新しくボトルを持ってきた。
 みちるがあまり酒に強くないことを知っていて、わざと勧める。
 「もう一本、開けようか」
 「・・・飲みすぎ」
 「いいじゃないか。僕だって、みちるを一人占めしたいんだ」
 みちるの言葉を聞き流して、はるかはコルクを抜いた。
 グラスに注いでみちるに手渡す。
 「酔ったみちる、すごく可愛い」
 目を細めてはるかが笑いかける。

 今度はみちるが、はにかんだ。





 あとがき

 ・・・なんだか尻切れとんぼ。な、気がしますが・・・
 でも、これ以上は書き足す気になれなかったわけで。
 「クール」だなんて言われている人ほど、愛する人の前では可愛い一面を見せていると思います。
 さて、この話で週一更新は終了です。
 と思ったんですが、もう一つ、UPしようと思います。
 この話がUPされたことの方が驚きなんですが(笑)
 なにせほんとに突発的にできた話なので・・・
 それではもう一週、お付き合いください。






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送