夕食の後片付けのためにキッチンに立っていたみちるは、人の気配を感じて振り返った。 はるかが立っている。 その手に持ったお皿を見て、みちるは小さく溜め息をついた。 「またにんじんを残したの?」 「それでも頑張ってたよ」 ほたるはにんじんが嫌いらしくよく残す。 「どうしたら食べてくれるのかしら」 「そのうち食べるようになるんじゃないか?」 はるかは楽観的だ。 「そのうち、って・・・今野菜をしっかり食べないと・・・」 唇を少し尖らせて言ってみる。しかしはるかは相変わらずだ。 「そんなにカリカリするなよ。美人が台無しだぜ。 ・・・そんなみちるも好きだけど」 はるかが背中から抱き締めて首筋にくちづけようとしたとき、二人の足に軽い衝撃があった。 見ると、ほたるがはるかの足にしがみついてこちらを見上げていた。 「ほたる?」 「はるかパパ、ほたるは?すき?」 真剣な目をしたほたるをはるかが抱き上げる。 「もちろん、ほたるのことも大好きだよ。かわいいプリンセス」 「ほんと?」 「ああ」 「じゃあ、ほたるとみちるママ、どっちがすき?」 「え!?」 はるかが目に見えて動揺する。ほたるに「ねえ、どっち?」と答えを急かされながら、ぎこちない笑顔を浮かべる。 ちらりとこちらに視線を寄越す。 「私も知りたいわ」 洗い物の手を止めてはるかを見ると、さらに困惑した視線を向けてきた。 「僕が好きなのはほたるだよ」 はるかの言葉に、ほたるの顔がパッと輝く。 「ほんとに!?」 「ああ。さ、もう寝るんだ。今日はほたるが寝付くまで傍にいるからね」 「ありがとう、はるかパパ!」 ほたるがはるかの手を引いてパタパタと自室へ戻っていった。 二人を見送ったみちるはくすくす笑いながら手早く洗い物を片付けた。 家の中が静まり返った頃、みちるの部屋のドアがノックされた。 「どうぞ」 相手がはるかであることは分かっている。みちるは体半分ベッドに入ったまま返事をした。 「ほたるはやっと眠ったの?」 「参ったよ。今日昼寝したらしくて、眠たくない、なんて言うんだ」 はぁ、と溜め息をつきながら、はるかがベッドの空いているスペースに腰を下ろす。 「一緒に寝てあげればよかったのに」 「僕にこれ以上みちると離れてろって言うの?」 「あら、はるかはほたるが好きなんでしょう?」 「みちるぅ〜」 わざと意地悪く言うと、はるかが情けない声を出した。 「あーあ。ほたるにはるかを取られちゃったわ」 言ってパフンとベッドに倒れる。あれ、とはるかがベッドに手をついてみちるに覆い被さる姿勢をとった。 「確かに、僕が好きなのはほたるだけど・・・」 みちるは髪を撫でるはるかの手を感じた。 「・・・でも、愛してるのは、みちるだ」 聞きたかった言葉を手に入れたみちるは、はるかに見えないように満面の笑顔を浮かべた。 髪を撫でているはるかの手を引っ張って、自分の上に倒れ込ませる。 「寝付くまで、一緒にいてちょうだい」 「いいとも。だけど、寝られるかな?」 「あら、寝かせてくれないのかしら?」 「みちるがあんまりかわいいから、襲わないとも限らない」 わざと真面目くさい顔をして、はるかが言う。それを聞いたみちるは軽く笑いながら尋ねる。 「まあ。はるかは明日は朝からお仕事でしょう?」 「みちるが元気を分けてくれるなら大丈夫」 言って肘をつき、みちるの鎖骨あたりにくちづけてくる。手はいつの間にかシーツの中にあり、みちるのやわらかな膨らみを優しく撫でている。 敏感な部分を優しく攻められたみちるは、恋人をベッドの中に招き入れた。 はるかの首に腕を回し、囁く。 「事故を起こしても知らないわよ」 「構わないよ。そうなったら、みちるにお見舞いに来てもらえる」 みちるの耳の後ろにくちづけながら、はるかが言う。 みちるは顔を動かして自分の唇をはるかのそれに重ねた。 お互いの熱を帯びた視線がぶつかる。 はるかは微笑むと、深いくちづけをしてきた。 それから間もなくして、みちるの部屋の明かりが消えた。 |
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